さくしかにきけばよくね

短編小説(私小説、たまにフィクション)風にして日常をお届けしてます

ハードボイルドなんだぜぃ

本物刑事のリアルなワンシーン(ブログ掲載の承諾は取っておらんが大丈夫か?)をワイルドタッチで描くぜ、の話。

 

男は強くなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格がない

まず彼のことを話そう。彼と僕とは小学校低学年からの幼馴染。彼はその当時から、警察官のお父様の影響もあり剣道を習い始めた。僕も竹刀を買って一緒に習い始めたのだが、彼とのあまりにも違う身体能力、才能の差にすぐに気づき、僕は一か月で剣道教室をやめた。彼は順調にその才能を伸ばし、中学や高校で県大会、全国大会で名を馳せるようになった。

彼は強いだけではなく、とてもやさしく男気にあふれた真の男だった。中学の時には上級生数人に呼び出されてもたったひとりで出向いて行った。高校では、地元のヤンキー集団と一悶着あった僕らの同級生を助けるために、身を投げ出して停戦を図ってくれたこともある。僕はよく腕相撲を彼に挑んだが、僕は両手を使い彼の片手と勝負するのだが、それでも彼の鼻歌まじりの勝負で秒殺された。

やがて彼は刑事になった。それは、なるべくしてなった天職なのだと思う。そんな彼が以前飲んだときに話してくれたリアルなシーンがある。男は強くなければ生きていけない、やさしくなければ生きる資格がない😊

 

なあ、バディ。これはドラマじゃないんだぜ

某マンションの一室。そこは暴力団の事務所だった。

内偵を終えて家宅捜索に入った刑事と、暴力団組員数人が対峙していた。

お互いに武器を構えている。

刑事側は新人刑事とベテラン刑事の二人。ベテランが僕の幼馴染だ。

一触即発。

めっちゃ緊迫の場面だ。

新人刑事は緊張していた。そりゃそうだろ、初めての実戦、新人なのだから。

そして彼は緊張のあまりそこで重大な過ちを犯した。

構えていた銃のとんでもないボタンに触れてしまったのだ。

その瞬間、新人刑事の銃から銃弾がボトボトボト・・・

6発の銃弾が床の上にすべて落ちてしまったのだ。

「????」暴力団組員も一瞬、呆気にとらわれる。ベテラン刑事も同じだ。

が、これを機に、一気に戦いの火ぶたが切って落とされるかもしれない。

さらなる緊迫感が走る。かといって、新人刑事は銃弾を拾うこともできずにただただ固まっている。

瞬間、暴力団組員のボルテージがあがり、こちらに突っ込んでくる気配がみえた。

その時だ、

ベテラン刑事がゆっくりと左手をあげ、その手のひらで暴力団組員の動きを制して、低い声でこう言った。

 

「タイム!」

 

幼い子供同士の鬼ごっこじゃないのだ。本番の戦いなのに・・・

しかし、なんと、暴力団組員の動きがそれで止まった。

「おい、装弾しなおせ」ベテラン刑事は落ち着いた声で部下にそう言った。

慌てて弾を装着する新人。

刑事二人が再びそろって銃を構えたとき、幼馴染は暴力団に向かって渋い声で言った。

「待ってくれて、ありがとな」

そしてニヤリと笑った。