さくしかにきけばよくね

短編小説(私小説、たまにフィクション)風にして日常をお届けしてます

教えておくれよ、パンダくん

4月4日。今日のいんぷれっしょん

教えておくれよ、パンダくん

これ事件だよね、絶対事件だよね、って話

 

公園では毎日だいたい何かが起きている

朝方、誰もいない小さな公園の前を通り過ぎようとしたら、

 

 

「ん?」、、何か気になるモノが、、、

 

近づいてみる。

 

 

「う、嘘だろ? なぜこんなものが?」

 



公園に、まさかの包丁。

 

「これ事件でしょ、絶対事件だよね」僕の中のもうひとりの僕が心の中で叫ぶ。

 

「待て、うかつに触るんじゃない!」とっさに鑑識魂が燃え上がった僕は、心の中のもうひとりの僕をたしなめる。「現状保護が最優先だ!」

 

凶器と思われる包丁へそっと近づいてみる。目視では血痕などは見当たらない。

 

「犯人(ほし)はなぜこんなところに凶器を放置したんでしょう?」心の中のもうひとりの僕はどうやら刑事を気取り始めたようだ。

 

「わからんが、かなり慌てて落として行ったのか、あるいは・・・」僕は僕で、鑑識課員から現場一筋50年の老刑事へと気分は変貌していた。

 

「あるいは?」心の中の新米刑事が唾を飲み込みながら問うてくる。

 

「ただの違法廃棄かもしれん」僕は空をみあげて小さくつぶやいた。

 

なんにせよ、この包丁をこのままにしておくわけにはいかない。かといって事件性がないともいえないので勝手に処分するべきではないと思う。僕はこのスマホから初めて110番通報をした。

応対した警察官に事情を話すと、すぐに警官を向かわせると言った。

「子供が触ったりすると危ないから警察が到着するまで私はここで待っていましょうか?」と提案してみたら、「いや、現場付近をまわっている者をなるべく早く行かせますから大丈夫です」と断られてしまった。僕と、僕の中のもうひとりの僕が抱いている熱量に比べると、警察の対応はかなりゆるかった。

 

電話を切ると、また僕らは老刑事と新米刑事に戻っていた。

「この事件、真相はどうやら闇に葬られそうですね」新米が言う。

「そうだな、目撃者もいなさそうだしな。所轄にできることはもう何もないだろう。せめてこのパンダくんに真実を聞くことができたらな・・・」

 

僕らは同時に、パンダを振り返った。

 

 

「めっちゃ笑ろてるやーん」