さくしかにきけばよくね

短編小説(私小説、たまにフィクション)風にして日常をお届けしてます

お恥ずかしい告白を一席

お恥ずかしい告白を一席

恥の多い人生でごぜーます、というお話。

 

落語調にて、ちょいとお恥ずかしい告白を

一席おつきあいをねがいます。

えー、過ぎたるは猶及ばざるが如しなどと申しますが、何事もやりすぎはあまりよろしいものではございませんな。むしろ恥ずかしくなったりするもんでございます。本日はあたしもね、その恥を、恥を忍んで語らせていただこうという寸法なんであります。

えー、一体何がやりすぎなのか。それはカラオケでございまして、主にヒトカラというものですな。おいおい、カラオケなんてぇものは少々やりすぎたところでカワイイもんじゃねえかい、と言われる方もおられましょう。まあ聞いてやってくらはい。約七年前でございましょうか、ひょんなことからヒトカラってのにハマリやしてね、これは楽しい、最高だってぇことで、カラオケボックスに昼夜問わず通い始めたのでございます。

そうですなぁ、ひと月に最低でも15回から20回、多い時には30回程は通い詰めておるんです。そんなに行けるわけがない? いえいえ、カラオケ店のはしご、なんてぇのもしょっちゅうですしね、あたしゃそもそもお酒も大好物なんでありまして、真昼間からカラオケ、飲み屋、カラオケ、飲み屋、一つ飛ばしてまた飲み屋なんていうゴールデンコース、日本語でいう金色梯子ですか、そんなのもあったりしまして、挙句の果てのとんだテイタラクでございます。アホほどカラオケしておることも充分恥ずかしいので、あまり口外はしておらなかったというか、他人様に胸を張って言えなかったのですがね、さらに恥ずかしいのがですね、これだけ通っておるわりに「歌がうまくなってない」という衝撃の事実なんであります💦

そろばんを弾いてみますとね、毎月20回近く、七年間通いますと、えーとパチパチパチ、ざっと1,500回を超えることになりやすでしょ。こんだけ通えば、まあたいていの習い事は上達しますよ。そろばんやお習字、柔道や空手でもいいでしょう、1,500回もまじめに通えば普通、段持ちにはなるでしょうよ。それがどうですか、あたしの場合はいっこうに成長がない、むしろ日によっちゃ音痴方向へ実力がさがってるというじゃないですか。ゆゆしきことでございます。あたしゃ、この七年間のいきざまをご先祖様になんと報告すればよいのやら。恥ずかしい、恥ずかしい、情けない気持ちでいっぱいです。世界中の向上心を持って一歩一歩成長されている方々へ、皆さんを心より尊敬いたします。

まあ、あたしだってね、この七年間なーんも悩まず、考えずにおったわけでもありませんでね、カラオケにかける時間と費用を、たとえばボイストレーナーにお願いしたならばちょっとは歌も上達するんじゃねえのかい、なんてーことも思ったりはしたんですよ。馬鹿はばかなりにそりゃね考えます。そのたびに妙な天邪鬼がこの胸に現れましてね、歌はテクニックか? ちげーだろ、歌は心だろ! ハートの叫びじゃねえのかい、とね、どうやらこの天邪鬼は江戸っ子のようで、そんな啖呵を切るんですなあ、これが。そんなことはただの言い訳、逃げだってことは合点承知の介なんですがね、あいかわらずの未熟者でございます。

おっと、カラオケ店の予約時間が迫ってまいりました。この続きは、次回「お恥ずかしい告白を一席(第二部)」にてお話させていただきやす。とりあえず、一旦、お後がよろしいようで。